纏足
それは人の自由を奪っていた―――
>俺はまさに纏足をされていたのだろう。
ビロードの部屋で、纏足という鎖を。
俺は、幼い頃両親に捨てられた。
拾ってくれた人がいた。
それが
吉田松陽
という人だ。
優しい顔をして、微笑んで、俺を抱き締めた。
俺を産んで、そして捨てた親の知り合いだったらしい。お願い、頼む、私達には育てられない、と先生に俺を託したらしい。
そして産みの親は二人とも死んだ。俺はまだ幼かった。そんなときの遣り取りだ。
先生は、俺に温もりを与えてくれた。
ふわりと頭を撫でてにこりと微笑む先生。手を繋いでくれる先生。
先生の大きな背中におんぶされるときは、好きな先生の顔を見れなかったけど接している先生の背中から優しさが沁み出し俺を満たした。
先生は、俺に教養を与えてくれた。
大人になって、一人立ちできるように。一人で生活しなきゃならなくなった時困らないように。自分の身は自分で守らなきゃいけませんよ。
そういって、学校から帰れば、武芸や、家事を教えてくれた。
先生は、俺に居場所を与えてくれた。
「銀時、お前はここにいるだけでいいんですよ」
暖かなその言葉は、今でも忘れない。
◇◆◇
俺が18になって、高校三年になってからだ。先生が亡くなった。
病気を患い、それからすぐに死んでしまった。
「銀時、一人置いていってしまうことを許して欲しい。銀時、ちゃんと、『自分』を生きてくださいね」
「自分で自分の居場所を見つけるんですよ」
居場所と教養と幸せを与えてくれた先生は消えた。
それからすぐ、先生の親戚が集まり、俺をどうするか、という話になった。
元々、親戚連中は俺の存在を疎ましく思っていた。育て親の先生がいなくなってしまった今、俺を置いておく義理もなく。
そして高校を卒業し、成人はしてないものの就職することのできる年だ。
俺は先生との思い出に浸る間もなく、追い出されてしまった。
途方に暮れ、項垂れる俺の肩を叩いたのは闇だった。
◇◆◇
闇の名は
高杉晋助
片田舎のこの地に、高杉はふらりとやってきた。
そして俺の姿を認め、俺の所に来ないかと。
金よりも何よりも、寝る場所と食事を得られればよかった俺は、軽々と高杉についていってしまった。
普通なら断る。中年のオッサンとか悪そうな顔した女、普通の人でも、そんなこと言われて軽々しくなってついていかない。俺だってそうだ。
だが、高杉は。
高杉は、昔、遠い昔にあったことのある人物だったから。
先生の家の近所に住んでいた。ヅラも知っているはずだ。でもすぐに越してしまい、一緒に遊んだ記憶どころか喋った記憶さえ薄い。
でも顔は覚えている。そうだ、この黒髪と黒い目。小さい頃と違い、片目を眼帯で隠しているが、その顔には見覚えがあった。
だからついていった。アイツも俺を覚えていた。だからついていった。間違いだったと気付いた時はもう遅い。
高杉は、俺を連れ込むや否や俺を抱いた。抱かれたというよりも犯された。
童貞さえ卒業していない俺に、高杉は無理矢理尻を広げて突っ込んだ。
抵抗しようにも、部屋に連れてこられてすぐに飲まされたクスリの所為で、身体の言うことが効かない。抵抗もできないまま何度もイかされ、そして眠りについた。
目が覚めると俺は大きなベッドの上にいた。部屋には誰もいない。ベッドから下り立ち上がると腰に鈍痛が走る。
よろよろと、それでも逃げなきゃと思い部屋の扉に手をかけると鍵。
窓を開けようとするが、人一人出れるスペースも開かない窓で、俺は完全に閉じ込められた。