出会ってから1ヶ月も経たないうちに俺の中に入り込んできた銀時。
数日だけですぐに銀時の性格がわかり、そしてその中身に惹かれた。
普段は、ソファーでごろごろ、大好きな甘味を食べたりジャンプを読んだりしている。
甘い物が好きで、ジャンプが好きで、日中は寝てるか起きててもぐうたらしていることが多い。
そんな銀時の性格は、喜怒哀楽の哀が若干欠けていて、喜と楽の基準が低い。怒る時は怒る。
そこははっきりしているのだが、銀時に哀しみ、という感情がないというか少ない。喜ぶ時は喜び、楽しい時は笑っているが、そんな幸せを感じる基準が低いと思う。
銀時に友人、腐れ縁と呼べる者たちがたくさんできた。そいつらと一緒にいる時が楽しいんだと。外に出れるのが嬉しいんだと。
手を繋ぐのが嬉しいんだと。あまい物がいっぱい食べれるのが嬉しいんだと。自由が嬉しいんだと。
・・・・・・どれもこれも安すぎやしないか。確かに、好きな物たくさん食べれた時なんかは幸せだ〜なんて思うのはわかる。
好きな奴や友人と一緒にいるのは楽しいと思う。だが、外に出れる?自由?そんなものは俺達の基本じゃないのか?
特にこの日本、自由を許されない人なんていない。
・・・・・・そんなことを聞くと、銀時の幸せに、過去に泣きたくなる。そして、銀時の自由を奪っていたであろう前の男、と言われる人物を殺したくなってくる。
突然だが、俺は銀時が好きだ。
その過去に、幸せを語る銀時に同情したわけではない。
最初はその外見からだった。
奇特な外見。日本人というのに、異国の血が流れているのではないかと思うほど、日本人にしては白い肌、
日本人のように黒い目をしてなくて不思議な色をしている瞳、そして見事な銀髪。
その外見に俺は、最初に会った時見惚れてしまった。
徐々に中身を知っていくたび、中身にも惹かれていった。
自分の信念を曲げず、懐に入れた人物を何が何でも守り包み込む。
しかし強い身体と違い、心は硝子細工のように脆い。
心を傷つけぬように力で守る、男はみんなそうではあるが、銀時の心は、硝子細工のような、マカロンのような、優しく扱わないと壊れそうな・・・。
銀時の存在だって、鎖で繋いで置かないとどこかへ飛んで行ってしまいそうな頼りなさがどこかうっすらと感じる。
銀時を飼っていた男もそう思って鎖に繋いでおいたのだろうか。
けして同情ではない。
鎖で繋ぎとめておきたい、という征服欲ではない。
男が女を守りたい、優しく扱いたい、と思う気持ちではない。ましてや銀時を女のように扱いたいからというわけではない。
守るとか、守られるとかそういうのではない。優しくしたいのではない。傷つけたいのではない。
ただ、
こんな感情は間違いだと思いたい。前の男と同じことをするつもりはないと言った手前、銀時に手を出すことはしたくない。
だから気を紛らわそうと、署の女と寝た。喫煙所で「ひじかたさぁ〜ん」としなを造って制服のシャツを開いて谷間を見せて寄ってきた別の部署の女だ。
俺の好みとは外れているが、今は性欲発散と気を紛らわすためなので誰でもよかった。総悟や山崎が聞いたら最低だって言うだろうな。
おざなりにシャワーを浴びて、家に帰った。もう日付が変わってしまっていたが銀時はリビングのソファーで待っていた。
ダイニングテーブルにはラップのかかった夕飯。
「悪ぃ、遅くなって。連絡しただろ?寝てりゃよかったのに」
「お帰り、土方――」
俺は銀時の頭に手を置く。ぽふんという音がしてそうだ。
いつも銀時は、俺が頭に手を置くと幸せそうな顔をするのだが、今日は違った。
一瞬顔が綻んだがすぐに強張り、俺の手を振り払った。
「?」
「あ・・・・・・ごめ・・・」
銀時は目をキョロキョロし始めた。
そして俺から離れるようにあとずさりし、目を逸らしながら「ゆ、夕飯、食べる?食べるなら、あ、っためてくる」言う。
「なんだ?何かあったのか?」
「っ!」
そんな銀時が気になり肩を掴むと、またその手を払われた。
いよいよ不審に思い、銀時の顔を覗き込むと、俺は驚いた。
銀時のビー玉のような瞳から涙が零れている。
「!?何があった!?どこか痛いのか!?」
「違、ごめ、な、んでもねぇ」
「なんでもないわけねぇだろう!なんだ?俺が何かしたか!?」
「そ、じゃねぇ、こんな、勝手に、泣いて、別に、違うのに、調子、乗って、」
「?わけわかんねぇよ」
「俺だって、わかんねぇ、別に、何でもないのに、勝手に、嫉妬して」
「嫉妬?」
「お前、の、服、匂う」
「服・・・?匂う?」
スーツを脱いで鼻に寄せる。するとさっきまで抱いていた女の香水の匂いがする。移り香だろう。
しかし何故それで銀時が泣く?
・・・・・・いい方向にしか考えが浮かばない。
まさか
「なんで、泣いたんだ。俺の服に、女の匂いが移っているのをなんで泣いたんだ」
「そ・・・れは、・・・ごめ・・・俺、お前のこと、好き、んなって、俺に優しくしてくれんの、ただ拾った手前、捨てること、
できないから、なのに、俺、自惚れて、付き合ってもないのに、土方と付き合ってる女に嫉妬して」
あぁ、やっぱりいい方向に進んだ。
俺はまだ、音も出さずに涙を流し続ける銀時を抱き締めた。
銀時はびっくりしている。それにまだ服にはさっきの女の匂いがついているだろう。
銀時にはかわいそうだが、今すぐにでも抱き締めたかった。それで俺も
「付き合ってる女なんていねぇ。今日遅くなったのは、この服に女の匂いがすんのは、さっきまで女を抱いてきた。
でも名前なんて知らねぇ。その女を利用したんだ」
「・・・?」
「お前への気持ちを勘違いだと思いたくて、手を出さない俺に安心しきってるお前を裏切ることはしたくなかったから、気を紛らそうとして女を抱いてきた。
それでお前を傷つけた・・・悪かった」
「う・・・ん?それってどういう・・・」
「お前が好きだ」
「ひじかたっ」
銀時は泣いたまま、顔を綻ばせた。
その笑顔は、俺が見た中で一番幸せそうな顔だと思っていいだろうか。
俺も、今までにないくらい嬉しい。