五-ウー-

「パー子ぉ可愛いわよォ」
「全然嬉しくないからね」


俺は、いわゆる二丁目、にあるオカマばかりいる、かまっ娘倶楽部でバイトしていた。
アゴ美に化粧を施され、女物の着物を着せられる。
オヤジ共の相手をしろというのだ。最悪。
溜息をつきながら店内に出ると、目の前にどっかで見たことがある顔。


「あ・・・れ、お前、ヅラか?」
「ヅラじゃない。ヅラ子だ」
「って、お前何してんの!?何でこんなところにいるんだよ!?」


ヅラこと桂小太郎は、俺の旧友である。
先生に拾われた時、先生の家の近所に住んでいて、先生を慕っていた、いいところの坊っちゃん。
先生が死んで、先生の家を出て行ってから、二度と会うことはないだろうと思っていた。
あの日から何度か連絡を取り合いはしたが、そのあとあの男に拾われてから、連絡も取れず、ずっと音信不通だった。
ヅラはイイ奴だった。先生が生きている時も、一緒に学んだ。勉強はコイツの方ができるから、ヅラから教えてもらうこともあった。学校にも一緒に通った。 武道も一緒にやった。俺の方が強かった。
そんなヅラと、本当に久しぶりに、大体10年ぶりじゃないだろうか、そんな再会がここ。こんな姿。


「久しぶりだな。銀時、いやパー子。連絡が途絶えてからずっと心配してたんだぞ」
「あぁ・・・悪かったな」
「元気にしてたか。今どこに住んでるのだ」
「今、居候させてもらってて」
「そうなのか。変なことはしてないだろうな?変なこともされてないだろうな?」
「してねぇよ!されてねぇよ!何だよ変なことって!」
「お前、昔は可愛くて下賤な輩共に狙われていたんだぞ。誘拐だってされかけていただろう」
「う゛・・・」
「でもよかった。また会えて。もしかしたら二度と会えないと思っていたんだ。元気そうで何よりだ。今度―」
「パー子ぉ!ヅラ子ぉ!お店開けるわよぉ!!」
「じゃあ、また後で話そう。積もる話もあるしな」
「おう」



その後、オヤジ共のセクハラに耐えに耐え抜いて、仕事を終え、カツラを取り着物を脱ぎ捨て化粧を落とす。
土方に連絡して、旧友に会ったから今夜はそいつの家に泊まると伝え、ヅラの住んでいるアパートに行った。
狭いが2DKの部屋で、そこに白い大きな不気味な生物がいた。


「な、何これ・・・」
「おお、こいつはエリザベスと言ってな、俺のペットだ。可愛いだろう」
「いやいやいや、どこがだよっ!キモイだろうが!」
「奴はとても頭が良くてな。頼りになる奴だ。エリザベス、コイツは俺の旧友で、坂田銀時という」
『はじめまして銀時さん』

エリザベスがはじめまして銀時さんと書いてあるプラカードを掲げる。
頭がいいって、会話できるってことね・・・。
しかもエリザベスは、俺にお茶を淹れてくれた。確かに頭がいい。気も利く。だが、動物か?中身は人間じゃないだろうか。 あ、ほら!今足のぞいたよ!?すね毛生えた人間の足だったもの!!

「なぁ、これってただの着ぐるみじゃぶごぉ!!」

エリザベスに殴られた。

「どうした?銀時。何か言いかけなかったか?」
「い、いや・・・いいっす・・・」
「そうか?」


それから本題に入る。
エリザベスは隣の部屋に引っ込んだ。やはり気の利く・・・ペットだ・・・。


「俺は、大学を東京の方にしたのでな。こっちで一人暮らしをして、それからずっとここにいるのだ。 さっき会ったあのクラブは本業じゃないぞ。本業は別だ。この辺のビルの経営をしている。 それで人手が足りないと、仲のいい西郷殿に無理矢理連れてこられああいう格好をしていただけだ」
「俺も人出が足りないって無理矢理だよ・・・。俺、今歌舞伎町で万事屋っていうか用心棒的な仕事してて・・・」
「そうか。お前は力は強かったからな」
「まぁな」
「・・・先生が死んだあとはどうしてたのだ。急に連絡が取れなくなって本当に心配したんだぞ」
「そ・・・・・・れは・・・」


俺は俯く。
言えない。俺をずっと心配していてくれた親友に、こんなこと、言えるわけが


「言えないことなのか。そうか。・・・まぁ予想はつくがな」
「ごめん」
「何故謝る。お前は悪くないだろう。・・・俺が守ってやればよかった。あの日、先生が死んでから、お前を守ってやることができなかった。・・・すまない」
「お前こそ謝んなよ。・・・いい。今は、幸せだから」
「今、誰と住んでいるのだ」
「え、と、土方っていって、新宿署にいる刑事さんで・・・イイ奴だよ」
「そうか。お前の身に何もないならいい。何かあればすぐに言えよ。俺はいつでもお前の味方だからな」
「・・・・・・ありがとな、ヅラ」
「ヅラじゃない桂だ」


ヅラとの再会は嬉しかった。
昔を思い出せる。先生と過ごしたあの日を。
先生は、もうこの世にいないけど、俺はずっと忘れない。
ヅラは昔から変わっていなかった。
それがとても嬉しかった。
無理に閉ざされた世界と、旧友との繋がりが、また再び開かれようとしている。