零-2-

ここ、新宿歌舞伎町では、最近厄介な薬が出回っているという。

クスリの名は『桃源郷』

法の下の支配の国とはいえ、やはり無法地帯のようなこの街には、身元不明な人間、ビザを持たず不法滞在している外国人、 影では臓器売買が行われていたり、禁止されている売春があったりと、危険な地域だ。
いろんな人の集まる街なだけあり、いろんなクスリも出回ってるらしい。
大麻や覚醒剤、LSDやMDMAとはまた違ったクスリらしい。非常に危険なクスリで、精神、身体共に依存度は高く、飲み続けると身体もボロボロになり身体にも害を与える。
服用するとたちまちエクスタシーを得られ、身体が熱くなり興奮状態になる。その状態で、殺人や殺人未遂事件、性犯罪などの傷害事件を起こす者も多い。 妄想が酷く、ストーカーののち、性犯罪、というケースも多く見られる。
依存度が非常に高いので、クスリの効果が切れると、幻聴が聞こえ幻覚がを見て、その幻覚を消すために傷害事件、 その幻聴に背中を押され、あるいは足を引っ張られ、強盗、窃盗、暴力事件を起こす者もいる。 さらに、すぐに服用をしないと、という強迫観念や、幻覚幻聴により精神に異常を来すものもいる。
このクスリを服用した者は全て精神病棟送りで、逮捕、などできる状態ではない。
こんなものが日本中に出回れば、たちまち日本は壊滅する。 クスリを服用して人を殺し、クスリを手に入れるために人を殺し、クスリによって人をぼろぼろにする。これはテロではないかと、マスコミは騒ぎ始める。
警察は、クスリの出所を調べるための捜査に追われている。
そのクスリを服用した者による、事件事故が多発していることで、さらに大忙しだ。
俺も例外じゃなく、家に帰る時間は遅くなる一方で、さらには家に帰らず、署に泊まることもあるくらいだ。


「土方、今日も遅いの?」
「あぁ。今日も捜査だ。夕飯はいらない。多分泊まりになると思う」
「そう・・・身体壊すなよ」
「ああ。じゃあ行ってくる」



◇◆◇◆◇



そんなクスリが出回っている歌舞伎町では、どこの店もピリピリしていた。どこも自分の店で被害者と加害者を出したくないのだ。当然だ。
店に入る前には、持ち物検査をさせてもらい、怪しい物を所持していたらすぐに警察へ連絡、という決まりになっていた。
警察は、この事態を深刻に捉え、歌舞伎町の住民も、不安を抱いていた。
自分の街を、クスリなんかによって壊されたくない、そう皆考えている。
だから、あれだけ街に、歌舞伎町では忌み嫌われる存在の警察に助けを頼んだ。
歌舞伎町は警察に協力した。


街中で、クスリを販売しようとしている者を見つけたら、俺の出番だった。
路地裏が一番危険だ。
建物がひしめきあっているこの場所では、路地裏は死角になりやすく、下賤な輩の溜まり場になるのだ。
そこに迷い込んだ者、好奇心で遊びに来たこの街の住民じゃない者、夜遊びをする学生、仕事帰りの女性に、クラブで飲んで酔っている女性。 そんな人々が標的になる。クスリを売る者だけでなく下賤な輩にとって、それらは最高の餌食なのだ。
どこにそんな溜まり場があるのか、どこらへんが死角になるのか、地図では記されない路地裏は、ここの住民でしかわからない。
だから、俺は最高の用心棒になった。
さらに、同じく同業者であり歌舞伎町の住民の全蔵も守ることに協力し、歌舞伎町の住民ではないが、 歌舞伎町のことをよく知っているという月詠も来てくれ、一緒に歌舞伎町を守ることにした。
神楽は、出所を調べる。マフィアの娘というのは伊達じゃない。
すぐに出所は確定した。
それを土方に教える。
警察も突きとめはしていたが、その居場所がわからず、神楽の情報が役に立った。
警察はすぐに動き、出所である、神楽のファミリーと対立しているらしい、”春雨”というマフィアを大量に検挙することに成功した。
当然、それだけではクスリが出回るのを止められるわけではないのだが、ほどなくして歌舞伎町桃源郷騒動は、終焉を迎えた。
――かに思えた。



◇◆◇◆◇



どれだけ、第二類医薬品だ、第一類医薬品だ、と言われようと、薬は薬。身体への依存はある。副作用だってある。
ましてや大麻、MDMAなどの薬物。依存度が高いクスリで、副作用はどれだけになるだろうか。
依存の高い、麻薬は誰なのだろうか。
麻薬被害者は誰だろうか。
副作用で、誰が悲しむだろうか。
どんな被害があるだろうか。



麻薬は、とんでもない悪魔なのだ。





闇をも虜にする―――――悪魔