三-サン-

土方と初めて会った日、あれは歌舞伎町だった。
金も持たず着る物も履く物もそこそこにあの牢獄のような闇から抜け出してきた俺は、土方の好意で拾ってもらった。
連れて行かれたのは大きなマンションの景色のいい部屋だった。
一人暮らしだという。
1LDKだが十分な広さがあった。


「悪いが寝る部屋は一つしかないから」
「はぁ・・・」


土方はスーツを脱ぎ、リビングの椅子の背もたれにかけた。
ネクタイを緩め首から引き抜く。そのあと寝室と思われる部屋に入り、服を持って戻ってきた。
その服を俺に差し出す。


「お前、俺とあまり背丈変わんねぇな。シャワーも好きに使っていいから入って着替えてこい」
「は、はい」


言葉に甘えてシャワーを浴びて、服を着替えた。着ていたシルクのシャツは脱ぎ捨て、ごみ箱に捨てた。
リビングに入ると、土方が煙草を吸って雑誌を読んでいた。
俺に気がついて、こっちこいと声をかけた。
あぁ、やっぱり、と思い、ソファーに座っている土方の前に行き、床に座り、着替えたらしい土方のジャージのゴム部分に手をかける。


「おい!何してんだ!」
「え、だって、ヤるんじゃないの・・・?」
「何言ってんだ!ヤ、ヤるって、お前男だろうが!」
「でも俺を飼ってた奴は、俺を使ってた」
「使うって・・・」
「俺、アイツのペットだったから」
「ペットって・・・。・・・・・・お前はそれがよかったのか?」

よかったって・・・ペットだったことが?
そりゃ・・・

「い・・・やだった。だから逃げてきた・・・」
「だったらしなくていいだろ。俺はそんなつもりでお前を拾ったんじゃねぇ」
「そうなの・・・?でも何もしないでここにいるなんて」
「・・・じゃあお前家事とかできるか?」
「家事?できる!ご飯も作れるし、洗濯も、掃除も」
「じゃあ家事やってくれ。お前がここにいる理由だ」
「はい!」
「敬語もいらねぇ」
「うん!!」


俺は、あの人―俺は先生と呼んでいる―に、教養だけでなく、家事など生活に必要なこと、さらに武道も教えてくれた。
だから家事なんてお手のもんだ。
早速、俺は食事を作った。
冷蔵庫にあったものを使って作ったが、やはり男の一人暮らし、冷蔵庫には酒はたくさん入っていたが、卵や野菜や味噌とか冷凍食品があるくらいだった。
冷蔵庫にビールよりもたくさんマヨネーズがあったのは何故だろう。それはのちのち、いやすぐにわかった。
それから毎日、朝晩食事を作り、昼は弁当を作った。
土方は喜んでくれた。マヨネーズまみれにしてるけど。


この生活に慣れてから、仕事をすることにした。
コンビニやスーパーのバイトの面接に落ちまくって、気分も落ち込んでふらふら歌舞伎町を歩いてたら、チンピラに絡まれてる男を見つけた。
その男は顎が割れていて眼鏡をかけた男だったが、それでもなんか地味な男で、いかにも弱そうな男だった。
放っとこうかとも思ったが、なんとなく目が合ってしまったので、仕方なく助けに入ることにした。
そしたらその絡まれていた男、名は志村新八という、は俺のことが気に入ったらしく、俺にホストにならないかと誘ってきた。 断ると、だったら用心棒みたいな仕事をやってくれないかと言われた。それが今の仕事だ。
入った店で、神楽に会った。



土方の同僚という、近藤、沖田、山崎がやってきた。
一人はよく知る顔だった。


「あ、お前は」


声を発したのはよく知っている顔のゴリラ。そいつも俺の顔を覚えていたらしい。
妙の店に来て、俺が追い出している客だ。ストーカー・・・。警察だったのか・・・。


「なんだ知り合いか?」
「お妙さんの店の用心棒だ」
「ソイツ、いつも俺が追い出してる奴・・・」
「・・・・・・。もう顔見知りだったのか」
「で、土方さん、この人がその銀時さんですかぃ?へぇ・・・その髪、地毛ですかぃ?」
「沖田さん、そんな突然聞いたら失礼ですよ」


蜂蜜色の髪をした、幼さの残る顔をした青年が、俺をじろじろ見る。
隣にいた地味な青年がそいつに言うと、あぁすいやせん、沖田総悟でさぁ、とにっこり微笑んだ。ジャニーズ系のかわいい顔をしている。
地味な子も後に続いて自己紹介してきた。
そのゴリラは近藤というらしい。話してみれば、豪快で、男が惚れる男だ。妙の店での出会いさえなけりゃイイ奴だって思えただろうに。
沖田は、可愛い顔して悪魔のような奴だった。超ドS。怖・・・。
や・・・。ジミーでいいや。地味だし。地味な子だった。