「土方さん、今日もお弁当、旦那の手作りですか?」
署のデスクで、今朝銀時が作った弁当の包みを開く。
山崎が、俺のデスクにお茶を置くついでに俺の弁当を覗き込んでくる。
今日の弁当はコーヒーよりお茶が合う。山崎気がきくな。
「わぁ、やっぱ旦那の弁当すごいなぁ。バランスいいですね」
山崎は、銀時を親しみをもって「旦那」という。どちらかというと、俺の方が旦那なのだが。
主に夜に仕事をしている銀時は、家に帰るのは日が昇る頃だ。家に帰ってきてすぐに弁当を作り、朝ごはんを作る。
そして俺を起こし一緒に食事を摂る。これが毎日の習慣だ。
朝ご飯は主に、昨晩の夕飯の残りか、弁当のあまり。焼き魚や卵焼きが出る時もあるが、毎日欠かさず味噌汁はついている。やはり朝食は味噌汁とご飯に限る。
銀時は俺の好みを把握していて、銀時の作る卵焼きは、最初甘かったが、最近は甘さ控えめの卵焼きになった。
俺は昔から、マヨネーズを山のようにかけるのが好きだが、銀時の作る料理には、少ししかかけない。
銀時の作ってくれた弁当を口に運ぶ。
冷めててもおいしい。
「何にやけてんでぃ気持ち悪ぃ。さっさと死んでくれよ土方ァ」
総悟が横で言う。
銀時の弁当を食べている時の俺は、顔の筋肉が若干弛んでいるらしい。
「若干じゃねェや。だいぶ弛んでますぜぃ」
銀時が仕事を始めるといい出した時は、俺は猛反対した。
それも歌舞伎町での仕事らしいじゃねぇか。
ホストかなにかやるつもりだろうと思ったが、万事屋だと。
ほっとしたはいいが、夜は歌舞伎町の店の迷惑な客の対応をするだと?ホストより危険じゃねぇか。
しかし銀時は昔武道をやっていたという。実力見せてやる、と突然技をかけられ、俺は即ギブアップ。
俺だって、空手に柔道に剣道に、いろんな武道で段を取ったが、銀時は俺より強かった。そんな細腰の、細腕の、どこからそんな力が出ているんだ。
悔しいが銀時は俺より強かった。
それでも渋る俺に、神楽という女を連れてきた。銀時を気に入って銀時に懐いているらしい。
中国マフィアのボスの娘だという。こんな女を連れてきて、この女と、俺が銀時の仕事を認めるのにどんな関係があるっていうんだ。それはすぐにわかった。
神楽は超怪力娘だった。だからマジで危険な時は神楽に手助けしてもらうから、女に守ってもらうってどうなんだって話だけど、
何かあったら必ずお前に連絡するし、な?
そう言われて、渋々ながらも俺は了承した。
今日は銀時は何をしているだろうか。よく家に、チャイナともう一人、ホストをしている眼鏡をかけて
、顎の割れた地味な男・・・新八と言ったか、そいつらが来る。今日もそいつらが来ているのだろうか。
銀時の作った弁当を食べ終え、弁当袋に入れる。
「いいなぁ!俺も手作り弁当が食べたい!愛妻弁当が食べたいな!お妙さんの作った弁当が食べたい!!」
「暗黒物質の弁当か」
警察学校からお世話になっている近藤さんが、俺が銀時の作った弁当を食べているのを終始見つめていて、羨ましそうに言う。
お妙、は近藤さんのお気に入りのキャバ嬢だ。歌舞伎町にあるキャバクラのホステスだが、その女に、近藤さんは惚れてしまったらしい。
お妙さん、江戸時代か。昔か。
どうやらこの妙という女は、銀時が連れてきた、その新八という奴の姉らしく、世間ってのは狭いもんだと思った。
この女には今まで何度かあったが、チャイナに負けず劣らずの怪力女で、得意料理は卵焼きだと言って真っ黒な暗黒物質(ダークマター)
を見せられ勧められた時は、銀時と共に全力で遠慮した。
何故こんなゴリラ女に惚れるのか。
初めて会った日に何があったのか知らないが、一目惚れしゴリラ女にプロポーズしたらしい。
それから毎日のように店に通い詰め、さらには家まで押し掛けているという始末。ストーカーだ。
そんな話を銀時から聞いた。
迷惑な客の一人がそんなゴリラで、毎日のように追い出してるんだぜ。と銀時が言っていた。それが俺の同僚の近藤さんだなんて、世間は狭いな〜と銀時も言っていた。
銀時の仕事も、何事もなく済んでいるらしいし、知り合いも増えたらしい。
あの日、銀時は逃げてきたと言っていた。今はその時の表情とは全く違う表情をしている。
俺もあの日から、俺の世界は変わった。