「何だァ?」
「・・・そいつを返せ。高杉」
「へぇ・・・俺のこと知ってんだなァ?まぁ、ここに来てるってことは名前くれェ知ってるか。コイツが教えたのかァ?」
「いいから返せ」
「返せ?コイツは俺の所有物(もの)だぜ?泥棒はそっちじゃねぇか」
「銀時はお前の所から出て行ってそれから俺の所に来たんだ。自分の意志で。だから返してもらう。それに銀時はモノじゃねぇ」
高杉は器用に片眉と唇の端をつり上げた。
肩に抱かれて高杉の横に立っている、というよりも支えられている銀時は目だけを動かし俺を見た。
あの紅い目がこちらを見る。
しかし、その目は虚ろだ。
高杉は一度、銀時の肩を抱いている、支えている手に力を入れ、そしてパッと離した。
それから銀時に問いかける。
「だってよ。お前のお迎えだぜェ?どうする?銀時ィ」
銀時は多分戻ってくる。
そう信じていた。
のに
「知らない・・・俺はここが、高杉の所が俺の居場所だから・・・」
耳を疑った。
つい先日まで俺の元にいて笑っていた銀時が
つい先日まで俺を好きだと言っていた銀時が
だから当然俺の所にすぐに帰ってくるだろうと思っていたのに。
俺は銀時の肩を掴んで帰るぞ、と言うが、銀時は俺を見ない。
見ないというか、目は合っているはずなのにぼんやりと、目が虚ろだ。
「銀時!?おい」
「?」
銀時は、俺の声に反応して、そっと手を伸ばす。そして頬に伸びるかと思った赤く擦過傷のある白い手は俺の口元に伸びた。
そしてぺたぺたと、赤ん坊がやるように、何かを確かめるように触れる。
「銀時・・・?お前、どうした」
「ひじかた?」
「お前」
俺は銀時の肩を掴んだまま、高杉を睨んだ。
「高杉、てめぇコイツに何した!」
「何?躾しただけだぜェ?ペットが悪いことをしたら飼い主はちゃんと叱ってやんなきゃいけねぇからなァ」
「銀時の目、どうしたって聞いてんだ!見えてねェんじゃねぇか!?」
「あぁ・・・コイツが暴れるからよォ、鎮静剤飲ませんだがそんな副作用があったとはなァ・・・俺も驚いたんだぜェ?」
「・・・ドラッグか」
「ちゃんとした合法モンだぜ?」
「・・・・・・とりあえずコイツは連れて帰る。ここには置いていけない」
銀時の肩を抱いたまま、玄関の扉を開こうとする。
すると高杉が声をかけた。
「銀時」
「!や、放せ、放して、俺は、ココが、俺の居場所なんだっ」
「銀時!?」
銀時は突然、俺の身体を押し返した。
そして高杉の所へ向かおうとするが腕を引っ張ると、その手を振り払われた。
銀時は高杉の所にふらふらと辿り着き、高杉はその、以前より痩せてしまった身体を抱き寄せた。
銀時は虚ろな目で俺を見る。
高杉は銀時の肩を抱き、口角をつりあげる。
「そういうことだ。帰れよ」
無情にも扉は閉ざされてしまった。