同じようでいて違う。
違うようでいて同じ。
俺に寝る場所を与えてくれた、三人目の男は二人目の男とは似ているところもあれば、まったく違う所もあった。
一緒に過ごすたび新しい一面が見えてくる。
土方十四朗はちょっと怖くて優しかった。
「てめぇ!本読んだら片付けろって言ってるだろうがァ!ソファーがジャンプまみれになってんじゃねぇかァァ!!」
すぐキレる。
そして
「てめぇ、俺が作ってやった飯を犬の餌にすんじゃねぇよ」
「あぁ?マヨネーズを侮辱すんじゃねぇ」
「マヨネーズをってかお前の味覚を侮辱してんだけど」
味覚崩壊。
土方とは年の頃は同じくらいだろう。土方は警察官でエリートだっていうぐらいだからたぶん俺よりは二つ三つ上かもしれないが。
俺は、両親がいなくて、拾われた子だから自分の正確な年も、誕生日も知らない。
ただ、初め俺を拾って寝る場所を与えてくれた人が俺に誕生日をくれた。
この名前は、捨てた両親がただ一つ残してくれた愛情だ。
俺は両親からもらった名前と、俺を育ててくれたあの人からもらった誕生日と教養を、今も大事に持っている。
そして、俺を飼っていたあの男からもらった首輪と腕輪・・・鎖を、俺はまだ解けないでいる。
土方の勤めている所は、新宿署。
土方と一緒に住んでいるこの場所は新宿。
新宿駅を挟んで、東西南北で違う顔を見せるこの場所で、俺は特に駅北側の、眠らない街歌舞伎町で働いた。
ずっと土方に食費やらの面倒を見てもらうわけにもいかないので、俺は働きに出ることにした。
しかし、20を過ぎたいい歳であるにも関わらず、俺はまともに働いたことがなかった。
教養はあれど、まともに働いて地道にお金を稼げる見込みもなく。
だから、自信のある腕っ節を利用して、万事屋のような仕事をすることにした。
といっても仕事の大半は用心棒。その他に、猫探しやホストのヘルプなど。
用心棒の仕事とは、歌舞伎町にあるたくさんの店の中、問題を起こす客がいる。
その客に上手く引き取ってもらうようにする仕事。
法が効く街ではあるが、警察に後ろめたいことがある者が蔓延る街なので、この街に警察は入れたくない。
だからこの街の問題はこの街の住民で解決したいのだ。だからこういう問題が起こった時こういった用心棒のような奴がいたほうがいいのだ。
そういうことをここ数ヶ月で知った。
本当にすごい勢いで流れていった。
この数ヶ月の間にいろんなことがあった。
土方と恋人同士になった。
いろんな人と会った。
銀髪、赤い目、という奇特な外見を簡単に受け入れてくれた。まぁこの街じゃ普通なのかもしれないが。
ホストクラブで働いてる顎が割れてる新八(俺にホストになってくれってしつこいが、俺を慕ってくれている)、
中国マフィアのボスの娘だという神楽(なかなかの巨乳だがあれはメロンパンを詰めているらしい。コイツも俺に懐いてくれてる)。
キャバクラで働いている妙は、新八の姉で、土方の同僚の近藤が最近入れあげているらしい。
妙の親友で、妙のことが好きらしい、女の子だけど男嫌いの九兵衛。
この前まで誰かのパトロンだったらしいが、俺がホストのバイトをしてから俺のパトロンになるって聞かないさっちゃんは、
眼鏡っ子でグラマラスな身体をしてるがドMだ。
ケツにかわいそうな病気を持ってるブス専のジャンプ友や、地方出身で訛りのある喋りで俺にべたべたしてくる、
妙のいるキャバクラのりょうが好きな黒もじゃ、人生転んで奥さんに逃げられた可哀想なグラサンのまるで駄目なオッサン略してマダオ。
とあるいきさつで仲良くなった、銀座のNO.1ホステスの日輪、日輪を守るように傍にいつもいる月詠、あと晴太。
土方の同僚の人とも仲良くなった。近藤、沖田、や・・・なんだっけ?ジミーでいいや。あとハゲとか鴨ちゃんとか。
特に沖田くんは俺に懐いてくれてる。土方よりも。
「銀ちゃんホストにならないアルカ?」
「なんで俺が」
「銀ちゃんモテモテヨ。絶対ホストになったらNO.1になるアル」
「いやいや、俺天パだからね。モテるわけねぇだろ」
「そうアルカ?ふわふわで気持ちいいヨ。まぁでも一人の人間としてはまるで駄目な男、略してマダオアルけどな」
「うるせぇ」
昼間はこれとこれといって仕事がないので、いつも家にいるが、そこにちょくちょく神楽と新八が遊びにやってくる。
土方も、新八の姉の妙にぞっこんな近藤を介して、二人と仲良く?なって、たまに暇な時は4人でご飯を食べたりする。
そんな二人は今日も遊びに来た。
「銀さん、ホストやりません?それで僕と一緒に頂点目指しませんか」
「いや、断る」
「私パトロンになるヨ!なんでも買ってあげるネ!」
「いや、遠慮しとく。つぅかお前らそんな話しにきたの?」
「いえ、ただ単純に遊びに来ただけですよ」
この二人は本当に俺に懐いてくれている。嬉しい。
ここに来て正解だった。
あの男に会えて正解だった。
俺は人間に戻れた、気がする。
二人が帰って、静けさが戻る。
しかし夜の新宿はこれからだ。
また喧騒に包まれる。歌舞伎町が目を覚ます。
俺はまた今夜も眠らない。