たとえばお前が、男でも、女でも、天人でも、犬でも猫でもアメーバでも。
どんな姿形してようが、どんな姿形になろうが、俺はお前に惚れている事実は変わらない。
真選組の食堂のおばちゃんが全員風邪を引いたり、怪我をしたりだので休んでしまい、一人も給仕をする人がいなくなってしまったため、戻ってくるまでの間、
万事屋に食事、洗濯をしてもらうことにした。
住み込みで、三食付きだと言えば3人は喜んで屯所に来た。
「悪いなぁ!突然おばちゃん達が臥せっちまってな。俺達が当番でメシを作ろうとも思ったんだが、何しろ剣以外、
包丁なんて握ったことのない野郎どもばかりだからなぁ。まずいメシで腹壊したくないし、
だからといってこんな血気盛んなムサイ男しかいない所に喜んで来てくれる家政婦なんていないしなぁ。
短期間だし、お前らに頼んだ方が一番いいとトシや総悟も肯定してくれてな。どんくらいの期間になるかわからんがよろしく頼んだぞ!」
近藤はガハハと笑いながら、万事屋3人を、これから寝泊りしてもらう部屋に連れていく。
通された部屋には山崎がいた。
「あ、どうも。これから先は俺がいろいろ説明しますんで」
「じゃあ、頼んだぞ、万事屋」
近藤は来た廊下をまた戻って行った。
「えっと、3人が寝る布団はこの押入れに入ってます。あ、荷物置いてくださっていいですよ。じゃあこれから案内しますので。最初は食堂へ行きましょう」
広い屯所内をぐるぐると回る。
食堂の場所を案内してもらい、厠の場所から風呂の場所まで。
「お風呂ですが、最初に入っちゃって下さい。女の子いますしね、きれいな時に入った方がいいですから」
「そうだよな〜。むさい男共の出汁が出てる風呂に入りたくねぇもんなぁ、神楽」
「そうアルネ。レディーアルからな」
「それじゃあ、大まかな説明と案内はこれくらいです。
何かわからないことや困ったことがあったら俺を呼んでください。俺じゃなくても、他の隊士に聞いてくれれば応えますので」
「はい」
「じゃ、これから昼ご飯、お願いします」
「ルージャ」
いつもぐうたらしているだけに、本当にしっかり仕事するのだろうかと思えば、仕事になるときっちりやるらしい。
メシは、いつものおばちゃんが作る物より美味かった。
神楽はもう風呂に入り、疲れたからなのか、もうすでに布団に入って寝てしまった。
銀時と新八も、入りに行こうかとタオルと着替えを用意しようとしたところで、沖田が部屋に入ってきた。
「旦那ぁ〜風呂入りやしょう〜」
「うわ!沖田さん!」
沖田は、手にタオルと着物を持って銀時を誘いに来た。
以前から銀時を狙っていて、やっと思う存分、裸を、銀時の白い肌を拝めると、下心を持って誘ったのだが。
「ん〜俺、後で入るわ」
銀時は断り、しぶしぶ沖田は一人で入りに行った。
新八も入りに行き、寝ている神楽と、二人になった部屋に、また来客が来た。
「お前、どうしたんだ、入らねぇのか」
「土方くん」
土方も、銀時を狙う一人で、以前告白したのだが、あいまいな答えしかもらえなかった。
今、銀時が風呂に入りに行くのと同時に入りに行き、偶然を装って風呂に入り肌を見れれば・・・とまぁ下心満載で待っていたのだが。
「いや、後で入るよ?」
「今の方がいいんじゃねぇか?最後の方の風呂は汚ねぇぞ」
「だろうなぁ。汗で汚れたむさい男共が何人も入った後だもんなぁ。でも人がいねぇときに入りたいからよ」
「なんだ?刺青でも入ってんのか」
「いんや?銀さんの素敵なボディーに落書きするわけねぇだろ」
「じゃあどうしてだ」
「なんでそんな細かいこと聞くの?細かい男は嫌われるよ〜。何?土方くん、俺と一緒に入りたいの〜?」
「そりゃそうだろうが。好きな奴の裸見たいってのは誰でも思うだろ」
「うっわ、否定しないんだ」
「うるせぇ。・・・なぁ、はっきりとした答えくれないか。そんなんじゃ諦めきれねぇだろ」
「あぁ・・・うん。今日は無理。悪いけど・・・」
銀時はそう言って、土方に背を向けごろりと横になり、無理に持って来させたテレビを見始めた。
土方は、銀時にもう会話する気がないとわかり、その場をあとにした。結局今日も答えは得られない。
このまま何日、何週間、屯所で顔を合わさなきゃいけないっていうのに、苦しい。
振られてから顔を合わすのと、返事が保留のまま顔を合わすのとどちらが辛いだろうか。どちらも辛いだろう。
どいつも振られてからというだろうが、保留のまま顔を合わせてみろ。期待したり、もっと好きになって、そのあとにこっぴどく振られたらどうすんだ。
・・・・・・土方は、これから先を憂いた。
それから数日、土方は仕事が立て込み、銀時と会話する時間もなく、日が過ぎていった。
やっと仕事が終わり、ふらりと食堂に行くと、そこには新八と神楽がせっせと隊士全員の食事を作っていた。
いつも厨房にいるはずの銀時の姿が見当たらない。
気になり、土方は厨房と食堂を繋ぐカウンターから中を覗いた。
「あ、土方さん」
「マヨラー、メシはまだアルヨ〜」
今日はカレーみたいだ・・・じゃなくて。
「アイツはどうした。いつも食事の仕事は万事屋がやってるだろう」
「銀さんは、今日ちょっと調子悪いみたいで」
「風邪でも引いたのか?馬鹿は風邪引かないだろ」
「銀ちゃん馬鹿なのによく引くアルヨ」
「はは、でも今日は違いますよ。お腹痛いみたいで、今部屋で寝てます」
「・・・大丈夫なのか」
「気にしなくていいアル。毎月あることヨ」
「毎月・・・?」
「神楽ちゃんっ!」
新八が焦るように神楽の発言を遮る。
「?でも寝込むほどなんだろ」
「寝込んではないですけど、ただ横になってた方が楽らしいので」
「なんともないのか」
「そんなに銀ちゃんが心配アルカ。お前銀ちゃんのこと好きアルカ?」
「違ェ!」
「そんなムキになるなヨ〜」
話している途中で昼食の時間が近づいてきたらしく、ぞろぞろと隊士たちが食堂に集まってきた。
話は中断になり、食事を摂る。
新八がお盆に銀時の分のカレーを乗せていたのを見て、土方は代わりに持っていくことにした。
山崎に頼んで、胃薬を出してもらい、それと一緒に部屋へ向かう。
部屋では銀時が横になってテレビを見ていた。
どこも悪い所なんてなさそうに見える。
「あれ、土方くん。あ、持ってきてくれたの。どうも〜」
「・・・お前、腹痛で寝てるっていうから来てみれば、元気そうじゃねぇか」
「んーや?痛いよ?」
よく見れば、やはり顔色が少しよくない。
着ているものも、いつもの黒い上下は身に付けず、ただ白い着流しを緩く着、上に袢纏を羽織っていた。寝るときは若草色の甚平を着ているのだが、今日は違った。
「・・・顔色悪いな。本当に調子悪いのか」
「んーまぁね」
「消化いい物の方がいいんじゃねぇか」
「いや、だいじょーぶ」
「薬飲めよ」
「あ、これ胃腸薬じゃん。頭痛薬ってないの」
「頭痛薬?お前腹が痛いんだろうが」
「そうだよ〜せーりつー」
「はぁ?」
「だから、生理痛なの」
「てめぇ、冗談はよせ」
「頭痛薬って生理痛にも効くだろ?持ってきてくんない?そしたら仕事できっからさぁ」
「笑えない冗談はよせ!」
「・・・・・・嘘かどうか、教えてやろうか?お前、この前の告白の返事、聞きたいんだろ?」
「・・・・・・」
「だったら、夜、10時頃、お前の部屋に行ってやるから。酒用意して待ってろよ」
銀時はそういい、土方に背を向け、ご飯を食べ始めてしまった。
夜、10時過ぎ、銀時は約束通り土方の部屋に来た。
早速本題に入るかと思えば、銀時は一升瓶を開け、酒を呷り始めた。
「土方くんも飲んだら?」
「いや、俺はいい」
「そう?俺は、ちょっと素面じゃ喋らんねェからさ。でもお前も飲んどいたら?素面のまんまじゃ受け止めらんねぇかもよ?」
「?」
この期に及んで意味不明なことを言う銀時に勧められ、土方も一口二口と酒を入れる。
しばらくして、酒もいい感じに回ってきた頃、さっきまでのおちゃらけた、軽い口調は消えた。
顔は上げているが、目を伏せ、酒の入ったコップを見つめる。いや、コップを通してどこかを見ている。
「なぁ、お前、アンドロギュノスって知ってるか?ふたなり、とも言うな」
「アンドロギュノス?ふたなり・・・あぁ、両性具有ってやつだろ」
「俺がそれなの。男よりのね、ふたなりなの」
「は・・・?」
「下品な言い方すりゃあ、穴が二つあんだよ。男にはねぇ穴があんの」
「・・・女じゃねぇか」
「でも、玉も竿もあるぜ?」
「・・・子宮とかあんのか」
「うん。膣も子宮も卵巣もあるぜ。男性ベースだから子供は産めねェんだけど」
「でも生理・・・来てんだろ」
「卵子が、そういう機能が備わってない未完成な卵で、それでも出てくるわけだから生理があるんだって」
「・・・ガキ共は知ってんのか」
「うん。生理ん時とか二人にはお世話になってっから」
「どうして俺に話した」
銀時は俯いた。
隠し通そうと思えば、隠せること。服を脱いだとしても、足を開いてみなければわからない。
「だって、気持ち悪いだろ。アンドロギュノスって、呪われた存在なんだってよ。
陰とも陽ともつかない性別の区別がない存在だから人間じゃないって・・・
もし、お前と付き合うってことになったとして、お前だってまだ若いんだし、そういうことだってしたいだろうが。
でもそうなったとき、男とも女ともどっとともつかない俺の姿見て、気持ち悪いと思うだろう」
「思うかよ」
「だって、お前ホモなんだろ?それなのに、女の部分があるんだぜ?」
「ホモじゃねェ!男なんて好きになったのお前だけに決まってるだろ!
俺はなぁ、お前が男でも女でも天人でも犬でも猫でもアメーバでも、どんな姿になったとしようが関係ねェ。俺は『坂田銀時』って奴に惚れたんだよ」
「土方・・・・・・」
「気持ち悪いからって理由で、返事を渋ってたのか。俺を振ろうとしてたのか」
「・・・・・・」
「俺のことが嫌いってわけじゃないんだな」
「うん・・・・・・」
「俺のことは好きか」
「・・・・・・うん」
「何だその間は」
土方は、俯いた銀時が、顔だけじゃなく耳まで赤くなってるのを見て、ククッと笑い、銀時を引き寄せ抱き締めた
。
銀時は恐る恐る土方の背に手を回し、土方の肩に顔を埋めた。
すると耳元で土方が、低い声で囁く。
「好きだ銀時」
「ん・・・・・・」
「気持ち悪くなんかねぇ」
「いざって時に気持ち悪くなるかもよ」
「なるかよ」
「そう・・・?」
「あぁ」
「ん・・・・・・」
「それに、穴二つってこたぁ突っ込める穴が二つってことだろ?」
「なっ!てっめ、っ!」
「生理終わったら、どんなもんなのか見せてみろ。本当に女性器になってるか確かめてやる」
「バッ!て、めぇ!俺が真剣に悩んでお前に打ち明けたってのにそんなことしか考えてねぇのか!!バカ!エロ!変態!死にさらせェェェェェ!!!」
土方は腹に拳を捩じりこまれ、気を失って数分、目を覚ましたら部屋には銀時の姿はなかった。
10.05.12UP