俺の恋人は、かぶき町で万事屋を営む坂田銀時だ。
付き合う前から銀時はSだとわかってはいたが、まさか総悟よりもSだとは思わなかった。
自分は決してMではない。
どちらかというとSだ。
俺以上にSがいるから比較すると俺のSさは低い方なんだろうが、Mではない。
だから土下座をするなんてプライドが許せない。羞恥である。
しかしこいつには逆らえない。
惚れたが負けだ。
今、子供たちのいない万事屋には、万事屋の主人と土方が一人いる。
銀時はソファーに座ってジャンプを読んでいる。
しかし土方はソファーに座らずに床に座り、背中を床に水平になるように曲げている。
つまり、土下座をしているのだ。
なぜこんなことをしているのかというと、
昨日にさかのぼる。
昨日は土方が非番で、銀時と朝早くから少し遠い所へ出掛けようという約束をしていた。
しかし昨日突然、仕事が入り、土方の非番は消えてしまったのだ。
銀時も土方が忙しい身分だということは重々理解している。
だが、行けなくなってしまったことを土方は連絡しなかったのだ。
いつまでたっても土方が現れないので、どうしたのかと屯所に行った。
ちょうどいた山崎に聞くと、土方は仕事だと、しかも幕府の高官の娘の警護だと。
「その娘さん美人なんすよ〜」なんて頬を赤らめながら、
土方が羨ましいだとかなんとか言っていたのを聞き流し、銀時は元来た道を歩き、万事屋へ帰って行った。
恋人の俺より美人な女?
嫉妬しているわけではない。
告白してきたのはあっちだし、
しかも頼み込んできたのを仕方なくというような感じで付き合ってやったのだ。
あいつは俺にベタ惚れだろ?
さてどうやって謝らせようか……と考えにやりと笑いながら銀時は歩いて行った。
それが昨日のこと。
昨日の夜、仕事が終わった土方は急いで土方があげた銀時の携帯に電話をかけたが銀時は出ず、
再びかけ直すと電源が切られていた。
万事屋にかけてみると新八が出て、居留守を使われた。
土方は焦り、今日、万事屋を訪ねた。
門前払いを受けるかと思ったが、すんなり入れてくれ、詫びの大福を受け取り食べ始めた。
あぁ、許してくれたのかな、と土方は思ったが、銀時は口を開かない。
土方は再び昨日のことを謝ると、銀時はにこりと微笑みこちらを向き
「土下座して?」
可愛い顔に、可愛い声で言われたのでクラッとしたが台詞の内容に土方は耳を疑う。
「は?」
「だぁかぁらぁ、土下座して?」
にこりと。そりゃぁもう可愛い顔でだ。
土下座をしろと笑顔で言うか?普通。
やはりSだなと、土方は思う。
だが、土下座など、自分を卑下するような屈辱なことできるわけがない。
しかし相手は銀時。
土方は銀時には逆らえない。
それに銀時の言うことには積極的に答えてあげたいと思うのだ。
じっと土方を見る銀時。
ついに土方は覚悟を決めて、膝を折り、床につき、頭を下げ、今の状態にいる。
しかし銀時からは、いいよ、とも、許さない、とも返ってこない。
「なぁ」
突然聞こえた銀時の声に、そろりと顔を上げてみると
「それが土下座?真選組の土下座はそんななのかぁ?土下座の仕方も知らないで、
よく真選組だなんて言えるよな。幕府に仕えている、幕府の狗が」
「は…?」
「頭だよ、あ・た・ま。頭は普通床にすりつけるもんだろ?何?踏まれてぇの?
いいぜ?頭床につくように踏んでやるよ」
銀時は上から見下ろし、口角をつり上げ、とても楽しそうに言った。
(ド、ドSだぁぁ!!)
「い、いや、するからっっ」
踏まれるのだけは勘弁だったので言うと、銀時は少しつまんなそうにした。
土方は頭を床につけるようにして、謝ると、銀時は土方にすり寄って来た。
「いいよ。土方くん。許してあげる」
「あぁ、悪かった。今度から連絡するから」
土方は約束をするが
「ん〜別にまたやってもいいぜ?」
「は?なんで」
「だってよ〜
またお前の土下座姿見れるだろ?」
ゾワッ
土方は背筋に冷気を感じた。
こいつは怒らせないようにしよう。
こいつは人が傅くのを見て喜ぶ
最上級のSだからだ。
俺の絶対は坂田銀時
