俺は今、高杉に組み敷かれている。
三千世界の烏を殺し
高杉は俺の上で嗤っている。
厭味な笑いだ。
でも嫌な気分はしない。
まぁ、こいつが優しいような、明るい笑みを浮かべていたらヒく。
つか、病院へ連れて行って、俺は眼科へ行く。
見慣れた顔に、汗が滲む。
その凄艶な姿に俺は息を凝らす。
「なぁんだァ?何見惚れてんだ?俺の顔がそんなにいいのかァ?」
「は…ッ誰がっ……てめ…の顔なんか…っ」
高杉はにやにや嗤っている。
ホントに厭味な笑いだ。
「銀時ィ好きなんだろ?俺の顔が」
低い抑揚のある声にどきりとする。
「ククッ声も好きなのかァ?締まったぜ?」
「っるせ…!ぁあっっっ!」
強く突かれて俺は絶頂に達する。
外が五月蠅くて目を開ける。
どうやら達した後、気を失っていたらしい。
高杉は女物のような派手な着物を羽織って、煙管を吹いている。
上等な煙の匂いがする。
窓から見える空は白みかけている。
外からは鳥のさえずりが聞こえる。
今日は妙に五月蠅く聞こえた。
「三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい」
「は?」
突然高杉が口を開いた。
「外、五月蠅ぇなぁ……お前起きちまった」
「は…?あぁ…鳥ね……。なになに?お前睦言なんか言っちゃって。熱でもあんの?
眠りを妨げる烏を殺してでも俺とゆっくりしてぇの?」
高杉は俺を見ると目を細めてゆっくり笑った。
「そうだなぁ……」
厭味な笑顔じゃない。普段と違う笑みに戸惑う。
素直な言葉に心が動く。
少し動揺していると高杉は外を見遣り、
にやりといつものように口端をつりあげ、厭味な顔で
「お前が寂しいだろうと思ってなァ。お前が添い寝してやろうかと思ってよォ」
「っ誰がいるか!なんだよ、お前にしては珍しくかわいいこと言うじゃねぇのと思ったのによ。
そのままそうだって言っときゃよかったのに。そしたら」
次の言葉を紡ごうとした唇は、高杉のそれによって塞がれる。
「ん…っ」
唇が離れると、高杉は着物をちゃんと羽織り直し、帯を締めて立ち上がる。
「じゃあなァ銀時」
「高杉…」
ふと伸びかけた手を抑え、俺は高杉に言った。
「お前が一人で寂しいなら烏殺して俺がいつでも隣で添い寝してやるぜ?晋ちゃん?」
「ククッそりゃあいぃなァ。隣じゃなくて俺の下で喘いでもらおうかァ」
「はっ!?死ねよお前っ」
高杉はククッと笑うと去っていった。
高杉が出ていったのを確認し、窓から外を眺め、溜息をつく。
徐々に明るくなってくるにつれて、外は鳥の鳴き声でますます五月蠅くなる。
そのせいで、もう一度寝ようと思っても寝れない。
「三千世界の烏を殺し……ね」
高杉の歌った詩(うた)を口にする。
口づけされる前に言おうとしてたこと。
さっきちょうど高杉が口を塞いでくれていなければ、俺は恥ずかしいことを口走っていただろう。
俺もそう思っていたと。
高杉は追われる身。
ゆっくりだなんて無理だろう。
でも高杉がそう詠ってくれただけで、よかった。嬉しかった。
「三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい」
いつか、叶うなら。
三千世界の、世の中すべての烏を殺して、静かな中で、ゆっくり寝ていよう。
