俺は坂田銀時。


銀魂高校3年Z組の生徒だ。
2年の時、クラス替えがなく変わらないクラスで、見知った顔ばかりの中に新しい顔が加わった。
担任で、数学担当の、黒髪で、背も高く、女が一目で惚れてしまうような整った顔の新米教師。
瞳は、本当に教師か?と疑いたくなるほど瞳孔が開いていた。



土方十四朗。



女子たちはその新米教師に群がり、誕生日はいつだの、彼女はいるのかだの質問攻めをしていた。
女は即物的だと呆れかえり、イケメンは敵だと自らの新担任を目の敵にした四月、
まさか俺が、その教師を好きになるなんて、思いもしなかった。



当たって砕けたら何が残る






高校最後の冬。

廊下に目当ての人物を見つけ駆け出す。


「ひーじーかーたー」
「先生つけろ」
「せんせー」
「うわーすげぇ棒読み」
「せんせー、好きだよ」


生まれつきの銀髪に、紅い瞳。
そのせいで先輩に目をつけられ、喧嘩を売られまくっていた銀時は、売った喧嘩は買い、
買っては勝っていたため、他校の不良にも目をつけられ喧嘩三昧の日々を送っていた。
好きでなったわけでもないのだが、いつのまにか銀時は不良と言われ、教師たちは銀時を
腫れものに触るように扱った。
しかし、この土方は違った。
二年の夏に、いつものように喧嘩を売られ、少ししくじり怪我をして、体育館裏で
ぼーっとしていたら土方が来た。
土方は、喧嘩するなよ、と言った。
銀時と向き合って嗜めてくれた教師など今までいなかった。
そして、他の誰に言っても信じてくれなかった髪色のことや目の色のことを信じてくれた。



「綺麗な色だな」


と言ってくれた。ちょうど日が沈む頃だったため、夕日が銀色の髪に反射して綺麗だと言ってくれた。
ぽんぽんと頭を撫でた手は大きく、ひんやりとしていて、手が冷たい人は優しい人だって
本当なのかな、と思った。
それから、段々と土方と接していくうちに、意外な一面を見れたり、体育教諭の近藤とは
幼馴染だとか、銀時と同じクラスで結構仲の良い沖田とも実は幼馴染だとか、いろんな事実を知ったりと、
たくさん近づけ、知るたびに銀時は嬉しくなった。
どうして土方のことを知れるだけで嬉しくなるのだろう、どうして土方が女子生徒に
べたべたされているのを見るとイラつくのだろうと理由を考えた結果、自分は土方のことが
好きなのだと気付いた。
どうせ告白してもすぐに断られるだろう、けど心に秘めておくにも肥大し過ぎた思いは
溢れそうだったので、毎日毎日こぼれさせていくことにした。



「すきだよせんせー」
「…ったく、まだそんなこと言ってるのか…。お前も飽きないな」
「飽きないよ。飽きるってことはせんせーのこと好きじゃなくなるってことだろ?そんなこと絶対ねぇもん」
「…今はそう言えるんだ。折角の高校最後の一年だ、彼女でもつくれ。
お前の周りたくさんいるじゃねぇか」
「友達がね。みんな俺のことそういう対象として見てねぇもん」



上級生や不良には目をつけらてはいたが、男女分け隔てなく接する銀時は、
同級生から後輩まで気に入られ、友達は多いが、銀時を恋愛感情で好きと言う人はいない。
土方には、本気で好意を持っている生徒が山ほどいる。
しかし、告白してもそれは子供の時の一時の感情だとすべて切り捨てられてしまう。
だから銀時は、本気にしてもらうために、毎日飽きもせず同じことを繰り返す。




当たって砕けろ。


そう思って土方に告白しているのだが、進展しないまま、ずっと平行線である。


「言い方が駄目なのでは?」
「そうじゃきー、なんか軽そうな言い方じゃー」
「頭軽い奴に軽いって言われたくねェ」
<「お前、まだあの先公が好きなのかァ?」


今、幼馴染の坂本の家に、同じく幼馴染の桂と高杉と銀時が上がり込んでいる。
そして土方のことについて相談をしているのだ。
昔から何でも話せる三人。
銀時が男の、しかも教師を好きだということに、最初は反対されたが(約一名いまだ反対しているが)
真剣なことを知り親身に相談に乗ってくれている(というか勝手に首を突っ込んでくる)。


「さらりと言っているから真剣味が足りぬのだ。もっと感情込めて言え」
「上目使いで言ってみたらどうじゃ?男は上目使いに弱いき」
「男がやったらキモイだろ」
「だからそんなことまでしなきゃ落ちねぇ男やめろや」



  そうか、真剣味が足りないのか……


銀時は、明日からどうやって伝えてみようか悩む。


「大丈夫じゃ。金時の気持ちはきっと伝わるき」

坂本は、本当にうまくいく、大丈夫だと思わせるような笑顔で言った。


「辰馬……だから俺は銀時だっつってんじゃん」







友の後押しで、俄然やる気が出た銀時は、感情込めて感情込めてと唱えながら、目当ての人を探していた。
その目当ての人物が職員室から出てくるのが見えた。

「あ、ひじかたせんせー……、」

しかし職員室から姿を見せた土方は、楽しそうに他の先生と話しながら出てきた。
栗色の髪の毛の、やわらかな笑顔がきれいな、美人。
同じく栗色の髪の毛を持つ、沖田総悟の姉らしい、沖田ミツバ。
産休に入ってしまった他の教諭の代わりにきた教師だ。
土方と沖田が幼馴染というなら、姉であるミツバとも昔から仲が良いのだろうという
推測通り親密そうだ。
やけに楽しそうだ。
銀時は土方に声をかけずその場を離れた。
教室に戻ると、何人かの女子がかたまって談笑しているのが聞こえてきた。



「ねぇねぇ、最近来た沖田先生いるじゃん?あの人、土方先生の彼女らしいよ」
「え、マジ!?土方先生狙ってたのにな〜」
「でもお似合いだよね」



銀時は、その話の内容にショックを隠しきれず、鞄を掴んで学校を飛び出した。







「おい、こら、昨日何も言わず早退するたぁいい度胸じゃねェか」


次の日、HRや授業以外では極力会わないようにしようと思っていた銀時の決意むなしく、
休み時間に土方につかまってしまった。


「あー、突然腹が痛くなってぇ〜すんませ〜ん」

言い訳をしてその場から立ち去ろうとする銀時の方を土方は掴み引きとめる。

「次早退する時はちゃんと連絡しろよ?心配するだろうが。腹はもう大丈夫なのか?」

「あ、うん……」

やめてくれ。そうやって優しくするから、子供の俺は舞い上がっちまうんだ。

「せんせい、すきだよ」

だからアンタに彼女がいても、この気持ちを捨てられずにさらに膨らんでいっちまうんだ。

「はぁ、だからそれは……」


「土方先生」

やわらかな女性の声が土方の名前を呼ぶ。
沖田ミツバだ。
彼女を確認した途端、銀時はその場から走り去った。


「あ、おい、」





土方とミツバが付き合っていると知ってからしばらく経ち、銀時は毎日の日課を中断した。
しかし銀時の土方に寄せる想いは変わることなく、日に日に肥大していくのだからどうしようもない。
そろそろ卒業式の近くなり、銀時は、進路も決まっていたので学校に来るのも意味はなかったが、
土方の顔を見納めようと毎日来ていた。
そして、卒業式。
これでこの学校に来るのは最後。
土方に会えるのもこれで最後だ。
長々と続く、校長や来賓の祝辞、たどたどしい送辞、定型文の答辞、周りのすすり泣く声。
それらは銀時の耳を右から左に通り抜けて行った。
土方に、もう一度告白しよう。
卒業生が拍手の中、三月の寒い体育館を出ていき、卒業式が終わる。
銀時は、土方を呼び出した。






ふわりと、3月の冷たくもどこか暖かい風が銀時の胸の花を揺らす。



「俺、本当に土方先生のことが好きだ。一時の感情じゃない。今日で卒業して、
来月からは社会人になって俺は大人の仲間入りをするんだ。だからもうガキじゃない。
だから、ちゃんと対等に返事をしてよ」



今まで告白しても相手にされず、軽くあしらわれていた。
それは先生と生徒だから。大人と子供だから。
男同士で、それに土方にはもう恋人がいる。
見込みなんてないけれど、今までのようにあしらうんじゃなく、対等に、きっぱり断って欲しい。
明日から学校に行かなくてよくなるんだから、もう当たって砕けちまえ!


土方はまだ口を開かない。
銀時は土方の顔を見れず、ぎゅっと目を閉じた。


「お前、毎日毎日飽きもせず告白してきてたのに、いつからかしなくなったから、 やっぱりガキの一時の感情だと思ったよ」


土方が紫煙を吐き、やっと口を開く。


「お前、いつから俺を好きになったんだ?」
「……二…年の夏…頃?」
「そんなにか…。本当にお前、俺のこと好きなんだな?」
「そうだよ!」
「じゃあ、教師と生徒じゃなくなったし、お前の気持ちに応えてやるよ」
「へ…?それってどういう…」
「付き合ってやるよ」
「えぇ!?」


銀時は耳を疑った。
まさかOKが貰えるなんて思わなかったから。



「え、マジ?だってせんせーその、ミツバ先生と…付き合ってるって…」
「ミツバと?アイツはただの幼馴染だ。どうしてそう思う?」
「いや、クラスの女子が噂してて……」
「もしかしてそれで毎日の告白しなくなったのか?」
「……うん」
「女子の戯言を信じるな」



土方は呆れたように溜息をつくがその顔はどこか楽しそうだ。



嬉しい嬉しい。



3月9日、3月の風は春の他に幸せも一緒に運んできたようだ。



「あぁ、でも3月いっぱいはお前はここの生徒だからまだ教師と生徒ってことで、4月から恋人な」
「えぇぇぇぇ!!?」




優城ユウ様リクエスト 逆3Zで土←←銀
3月9日が卒業式は某楽曲から。私の地域は3月1日〜3日とかが基本だった。

09.11.19 10.02.12UP
恢罹