記憶がなくなるまで飲むという行為は、大変危険である。
Bad Morning
目を開けると見慣れない天井。
背にはいつもの煎餅布団ではなくてふかふかした不気味な色のシーツのかかった布団。
布団の横には部屋を妖しく照らすライト。
いわゆる出合茶屋。
やばい。覚えてない。
昨日は、朝(正しくは昼)起きて、新八に追い出され、パチンコに行って、負けて、ヤケ酒をした。
店に入って飲み始めてからの記憶がない。
掛け布団からのぞく栗色の髪の毛。
長さは首元までしかない。
ショートカットの女かぁ……
もぞっ
隣に眠る女が身じろぎをする。
そうすると、顔は髪の毛で隠れて、ここからの角度じゃ見えないが、身体が見えた。
ほどよく筋肉のついた腕。骨ばった肩。
そして、板のように平らな胸。
……あれ……??
これって、まさか……おと………
いやいやいやいや、ないないないない!!!!
ここで考えられることは三つ。
ひとつ、彼女は、貧乳である。
何かのスポーツをやっているから腕に肩が張っていて、胸にいくべき脂肪が筋肉に回ってしまった…。
ふたつ、彼女は発達途中の子供である(倫理問題に反するが)。
肩が広く見えるのはいかり肩だからである。
みっつ、男である。
肩が張っていて、腕に筋肉がついているのも普通である。
三つ目が最有力候補である。
だが俺は一つ目か二つ目に全身全霊を賭けたい。
いや、二つ目はできれば避けたいところであるが、しかし女という点においては良い。
あと、できれば知らない人であってほしい。
それは何番目の予想であっても願う。
「んん〜」
しかし神様は非情である。
「あ、おはようごぜぇやす」
神様の選んだのは、三つ目だった。
しかも、その顔は明らかに知ってる顔であった。
「旦那?どうしたんでぃ」
その独特の江戸っ子調の喋り方は、沖田総悟である。
固まっている俺を不審に思ったらしく、普段と同じような調子で話しかけてくる。
よりによってこの子かよ・・・
「お、沖田く〜ん、ごめんね…?大丈夫?」
「?大丈夫でさぁ。それよりも旦那は?」
「ん、俺は大丈夫だけど…でも、昨日さぁ…」
「ヤりやしたねぇ」
沖田はさらりと言ってしまう。
「う……俺…さ、あの、覚えてねぇんだけど…」
昨夜のことを覚えてないと伝えると沖田は傷ついたように言う。
「覚えてねぇんですかい!?昨日はあんなにたくさん抱き合ったじゃねぇですかぃ」
「ごめ、酒入ってたし……」
「酒の勢いでヤったんですかぃ!?俺、男とは初めてで、旦那のことが好きだったからできたのに…」
「その、マジでごめん!!」
ヤバイ。
マジで覚えてない。
沖田を酒の勢いで抱いてしまったらしい。
しかも俺のことが好きだと……俺はそれを踏みにじってしまったことになる。
「…責任取ってくだせぇ」
「う…ど、どうすればいい?」
「俺と付き合ってくだせぇ」
「……え?」
沖田から付き合ってと言われてしまった。
でももっとすごいことを言われるかと思った。
「旦那は最中に、俺が付き合ってくれと言ったら頷いてくれやした。
だから付き合ってくだせぇ」
ちゃんとけじめはつけるべきだろう。
「うん。わかった」
「ぇ…マジですかぃ?」
付き合ってくれと、半分強制するように言った本人が驚いている。
「責任取るよ」
「本当ですねぃ?」
「うん」
再度確認すると、沖田は二コリと笑い、じゃあ風呂に入りましょう、と俺の腕を掴んだ。
俺は、腕を引かれながら、こいつ腰は大丈夫なのか?と心配した。
行為の後は腰が痛むと聞いたことがある。
とりあえず俺は腕を引かれるままに、布団から出ようと、立ち膝になる。が
がくん
膝は、脳が信号を送っているのにもかかわらず、
力が入ってくれない。
そして、驚くことに、ケツから何かが垂れてきた。
確認のために手で触れてみると、白濁。
俺が驚きと困惑に目を見張っていると
「あぁ、すいやせん、昨日は激しくし過ぎやしたねぃ。足腰立たないでしょう」
沖田はにこにこしながら言う。
「ね……ちょ、まさか、抱か…れたの、お………れ?」
「ええ。そうでさぁ」
いいぃやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
さらりと沖田は答える。
さっきの演技はなんだったのよ!!
あたかも俺が抱きました〜的な!!!!
依然としてにこにこしている沖田。
こいつ、俺が沖田を抱いたと勘違いしていることに気づいていて
なおかつ俺をからかっていたのかっっ
「確かに、俺が旦那を抱きやした。でもさっきの約束は覆せやせんよ。
俺と付き合うって約束」
「でも、」
「最初に勘違いしてたのはアンタで、俺はただ本当のことを言っただけでさぁ」
酒を飲んで記憶をなくすことは本当に危険である。
後に後悔する約束をしたり、冷静な判断力を持たない。
とりあえずこれが"Good Morning"なのか"Bad morning"なのかそれはこれから次第ということになる。
今日は一つ、教訓を学んだ。
酒を飲むとろくなことがない。
