記憶がなくなるまで飲むという行為は、大変危険である。
Bad Morning
目を開けると見慣れない天井。
背にはいつもの煎餅布団ではなくてふかふかした不気味な色のシーツのかかった布団。
布団の横には部屋を妖しく照らすライト。
いわゆる出合茶屋。
やばい。覚えてない。
昨日は、朝(正しくは昼)起きて、新八に追い出され、パチンコに行って、負けて、ヤケ酒をした。
店に入って飲み始めてからの記憶がない。
だから何故隣に、こいつがいるのかがわからない。
いつも会っては喧嘩して、お世辞にも仲がいいとは言わないだろう人が。
土方十四朗が。
「嘘だ…悪夢だ……まさか…
土方くんを掘っちゃうなんてーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
「おい、こらちょっと待て、誰が誰を掘ったって?」
俺が頭を抱えて叫んでいると、土方は起き上がり、煙草をふかす。
「ごめんね〜土方くん〜腰痛くなぁい?つか、俺、土方に勃っちまうなんざ最悪」
「おいちょっと待ててめぇ、最悪ってなんだコラ。ってか、掘られたのお前」
今信じられない台詞が聞こえた気がする。
「……は?」
「だから、掘られたのお前だから」
「ぎゃーーーーーーーーーーーーーぁゲホゲホッッッッ」
俺は絶叫した。
けれど喉が痛い。
途中で声が掠れた。
「あぁ、昨日お前声出し過ぎてたからなぁ」
「嘘だ!てめぇに掘られたなんて!!……ってことは、お前俺見てムラムラしたってこと?」
「は、ち、っげぇよ!!」
「どっちだよ……っっっ!!!!」
「?どうした??」
動いたら出てきた。
俺のケツから、どろりと信じられないものが。
「ひ…っ」
「あ…あぁ、わり、始末すんの忘れてた。ほら見ろ、お前じゃねぇか掘られたの」
「ぅるせぇよ…ぅぅぅぅやっべーよ最悪だよ…おい、忘れろ昨日の俺の痴態は!!」
「……は?待て、そこか?論点は」
「そうだろーが。んな喘ぐところ見られてたなんざ最悪だろーが」
「…………」
あれ?俺変なこと言った?
なんで土方黙ってんの?
「……ほぉ…そうか」
あれ?何?
「お前は、俺に抱かれたことは受け入れるんだな?」
「え…だって、もう過ぎたことだし…」
「男に抱かれたことが嫌だとか、俺だから嫌だという訳じゃないんだな?」
「え、まぁ……恥ずかしいけど……」
「ふぅん…」
え、何何?なんか俺変なこと言った?
なんか土方にやにやしてるんだけどっっ
別に土方だったから良かった。
もしこれが新八とか、ヅラとか、近藤だったら泣く。
家族だと思ってる奴や、親友、ゴリラに抱かれたとなると俺は泣く。
土方は、まぁ、仲は悪いけど、顔はいいし、後腐れないだろうし……
にやにやにや。
土方がもっと笑ってる。
「へぇ、俺のこと嫌いってわけじゃあないんだな?顔は好きなんだな?」
別にそんなことは言ってないが。って、さっき思ってたこと口に出して言っていたらしい。
「じゃあ、付き合うか」
……は?なんでそんな話に飛躍すんの?
「お前のこと抱いたのはなぁ、正直に言うよ、お前が好きだからだ」
「……え?」
「お前が酔っ払ってふらふらしてるのをいいことに連れ込んだ。
殴られるか嫌われる覚悟でいたがな……お前は相手が男だとか俺だとかは気にしてないようだったからな。
よかった。
付き合ってくれ」
「はぁぁぁぁあ!!??嘘、お前が俺を!?お前と俺が!?嘘、ずっと喧嘩しまくってたじゃん!!」
「喧嘩するほど仲がいいとか、好きな奴ほどいじめたいってのがあるだろ?」
「ガキかよっっっ」
土方は急に真面目な顔になり、こちらに向き合った。
「俺と付き合え。
ケーキとか買ってやるし、お前は俺のこと嫌いじゃないんだし、なにより身体の相性はピッタリだ」
土方の気迫に負け、思わず頷いてしまう。
にやり。
「決まりだな」
<「え、待っ、違っ」
慌てて訂正しようとするが、その前に土方の顔が近付いてきた。
「んむっっ」
俺の唇は土方のソレと重ねられる。
驚いて目を見開く。
すると目前一杯に広がる土方の顔。
思わず見惚れてしまう。
あぁ、俺は結構こいつの顔好きだわ…。
顔が好き……から始めてもいいんかな?
いや、まず先に身体から始められたか……
これが"Good Morning"なのか"Bad Morning"なのかわからないけど、
酒を飲んで記憶を失うことはやはり危険だ。
何が起こるかわからない。
