注意力散漫
空が闇に包まれた頃、一階にあるスナックの明かりと二階の玄関の電気で浮き上がった看板
「万事屋銀ちゃん」の玄関に立つ。
仕事から着替えもしないで直接来たことによって黒い隊服のまま、訪ねた。
呼び鈴も鳴らさず、ドアを開き、ずかずかと居間へと一直線に向かう。
そこにあるソファの上には、万事屋の主人、
沖田の恋人、坂田銀時がいた。
今日の銀時はなんだかいつもより機嫌が良さそうだ。何かいいことでもあったのだろうか?
銀時は、沖田を確認すると、呆れた顔で、
「君ねぇ、呼び鈴くらい押しなさいって」
「こんばんは」
無視して銀時に挨拶する。
銀時はまた呆れ顔で
「君、人の話聞こうよ。…まぁ、いらっしゃい」
「ケーキ、買って来たんですぜ」
「おお〜沖田君ナイス〜あ、俺、茶淹れてくんね」
「すいやせん」
今のうちだ。
買ってきたケーキに急いで手を加える。
『カプセル状で、水にすぐ溶ける!!しかも、速効性☆甘いよ♪』
などというような謳い文句の書かれたカプセルを、
急いで、買ってきたケーキのクリームの中にしのばせる。
クリームにも溶けるだろう。
甘いと言うし、たぶん銀時なら気付かないだろう。
そう。沖田のしのばせたのは媚薬だ。
本当は、液体状の物がよかったのだが、お茶に入れるのには、細工をするために、
銀時に席を立ってもらうか、自分でお茶を淹れに行くかしないといけないので、怪しまれるし、面倒だ。
手早くできたし、銀時も戻ってきていないので、気づかれていない。成功だ。
しばらくして銀時が戻ってきた。
「はい、お茶」
「ありがとうございやす」
銀時は、ケーキにフォークを刺して塊を取り、口に運ぶ。
それをじっと見ていた。
銀時は沖田の視線に気づき
「どしたの?欲しいの?」
「え?」
ドキ。
銀時が欲しくて、媚薬を入れたことがバレたのかと思った。
「いや、沖田君ずっとケーキ見てるからさぁ、もしかしてケーキ食べたいの?」
よかった。違ったみたいだ。
しかし怪しまれてしまったらしい。
普通にしてないと。
そう思っていたら、目の前にはフォークに乗ったケーキの塊。
「?」
沖田は銀時を見ると、
「はい、一口あげるよ」
驚いた。
銀時が大切な糖分を人にあげるなんて。
そういえば、なんか今日は機嫌が良さそうだったな。
「今日、仕事入ってさ、依頼人が気前のいい人で、かなり依頼料くれたんだよね」
あぁ、それで機嫌が良かったのか。
「何?食べねぇの?俺から糖分もらえるなんて滅多にねぇよ?」
「いや、」
「俺の好意を受け取れないんだあ〜沖田君はあ」
「いや、いただきます」
そんなこと言われたら食べるしかないし、それに媚薬を入れた部分はほんのわずかの場所だ。
当たる可能性など低い。
しかし、今日の沖田は運が悪かったらしい。
(ん?なんか、普通の生クリームと違う味がする……まさか)
「はぁ……っ」
謳い文句は嘘じゃなかった。
口に入れ、咀嚼し嚥下した途端、体が熱くなった。
息も荒くなり、沖田は顔を真っ赤にしていた。
銀時は沖田の様子がおかしいことに気付く。
「どうした?」
「な、なんでもねぇです…」
「なんでもねぇって顔じゃねぇだろ?」
言えない。しかし効果は絶大だ。
バレるのも時間の問題だろう。
銀時は不審な目で沖田を見つめている。
「なぁ、どしたの?大丈夫か?」
銀時は手を伸ばす。
が、触れる直前で、沖田は手を振り払ってしまった。
今触られると危ない。
だが、そんな挙動は銀時をさらに怪しませてしまった。
「どうしたのか言ってみなさい」
なんかお母さん口調だ。
怒られている子供のように、沖田はびくりと肩を震わせ、打ち明けた。
「何?俺に飲ませようとした媚薬を誤って自分で飲んだ?ブワハハハハハハハ!!!!」
銀時は腹を抱えて笑った。
沖田はいたたまれなく、体も熱く、顔を真っ赤にしてそっぽを向いている。
普段なら、笑われることなどない。むしろ笑う方だ。
からかったり、いじったりして笑うのはいつも自分の方なのに、笑われている。
それに普段ならこんな失敗などしない。
人にするときは細心の注意を払い、成功させるようにと心がけるのだが、今日は運が悪かった。
恥ずかしい。
体も熱く、いろんな意味で恥ずかしく、激しく居たたまれない。
沖田は、早く治まってくれないか、或いは、
この熱を早く解放できないものかと考えを巡らせていると
しばらく笑っていた銀時の笑い声が消える。
どうしたのだろうと沖田は銀時の方を向いてみると鋭い目をした銀時がいた。
そこには少しばかり怒気が表れている。
「……てことはさ沖田君?俺に媚薬飲ませようとしてたんだよね?
……そんで俺にイタズラしようと思ってたのかな?」
「す…すいやせん…」
銀時はにこりと笑った。
美しい笑み。
しかしそこには悪魔が潜んでいた。
「じゃあ、イタズラ…しよっか?」
沖田の前で目が眩むような光景が繰り広げられている。
銀時は着流しから腕を抜き、黒いシャツの前を開き肩にかろうじてかかっているような姿。
そして下は脱いでいる。
そんな格好で銀時は自身を擦り、濡らした指を自らの後孔に突き入れている。
一方沖田は隊服の上着は脱がされ、首に巻いてあったスカーフは自分の手首に巻かれている。
そんな光景を見せられていながら身動きが取れないのだ。
しかも沖田は媚薬を飲んでいる。
自身は痛いくらいに主張をしている。
「だ……旦那…ッッ」
「ん……ふっ…んんっな……に?」
「だん……銀時さん…っも、我慢できね…ェです……ッ」
「欲しいの?」
銀時は息を乱しながら、情欲に濡れた瞳を細めて言った。
妖艶だった。
沖田はすぐにでもがっつきたい衝動に駆られたが、身動きが取れないし、先程のこともある。
「すいやせんでした…っ」
「ふふっ……勃ってる…あの媚薬そんな強力だったんだ?」
「う"っ」
銀時は硬くなっている沖田の自身を指でなぞってきた。
それだけの刺激でも達してしまいそうになる。
「これ、俺の中に突っ込みたい?」
「は…い」
「じゃあ、」
さっきと同じ笑み。
「お願いしますって言ってごらん?」
「お、お願いしやすっっ!!」
銀時はその言葉を聞くと、口角をさらにつり上げ、沖田のベルトを緩め、
ジッパーを下ろし、下着から主張をしているモノを取り出すと、銀時は寝ている沖田の上に乗り、
解した蕾へと導いた。
沖田の蜜を零しているモノに手を添え、沖田の胸にもう片方の手を置き身体を支えながら、
徐々に腰を下ろしていく。
「あ……はぁ…っんんぅ」
銀時の中はひどく熱かった。
もう我慢できずに下から突き上げた。
「あああっっ!!あぁ…っや・あ…やぁっ」
いきなり突かれた衝撃で締められた所為と、中の熱さと、媚薬の効果によって、
沖田は達してしまった。
銀時は妖艶に微笑み、まだ萎えないモノを締め、腰を揺らし始めた。
(旦那には勝てそうにねぇや…)
しばらくして腕の拘束が解かれ、沖田は思う存分銀時を味わった。
「あ…んんっふぅ!……んあっ、ああっ、そ…ご、そぉご……っイくっィく!!」
「銀時さんっ」
「あ―――――っっ」
二人は疲れてそのまま眠りに落ちていった。
その後、銀時に媚薬は没収された。
しかし、次こそは、銀時に飲ましてやる、と心の奥底で決意を固め、
いつかは下剋上を叩きつけてやろうと、黒い笑みを浮かべた。
