新しいはじまりに

「だーんな」
「あ、沖田くん」


春の暖かな風が吹いているとはいえまだ気温は低めで、歩きながらアイスを食べる気にはならない季節なのに、 銀時はソフトクリームをぺろぺろ舐めながら歩いていた。


「あったかいねぇ〜」
「あったかいですけど歩きアイスしたくなるような天気じゃないですぜ?風強すぎでさぁ」
「突然食べたくなる時ってあるだろー」


ぺろぺろぺろぺろ
白いソフトを紅い舌で下から上へ舐めていく。
沖田はあらぬ想像をしていた。


「のわ!うっわつめてっ」


銀時の口から外れた所にソフトがべっとり。
立ち止まって二人で話していたため、歩行者の邪魔になっていたらしく、誰かが銀時の肩にぶつかった。
その衝撃で銀時の大切なソフトが顔についてしまった。
ソフトの白が、銀時の白い肌についているのはまた、アレを彷彿させるようで。
銀時が、頑張って舌を伸ばし舐めとろうとするが届かず、拭おうと指を伸ばしかけたところで、沖田は銀時に顔を近づけ顔についたソフトクリームを舐めとる。


「ぎゃっ」
「あぁ、まあこんな日に食べるソフトも悪くないですねぃ」
「ななな何してんのぉぉぉぉぉ!!俺のソフト取るな!じゃなくて、ここ何処だと思ってんだァァァ!!」
「何処ってかぶき町でさぁ。わかってまさぁ。俺を馬鹿にしてるんですかぃ?」
「そう!かぶき町!かぶき町の道のド真ん中!!」


さっき銀時に人がぶつかったぐらいだから、人通りが多いということだ。
ということは、見てた人も多かったわけで。
銀時はいろんな羞恥で顔を赤くしている。


「昔じゃあこんな風に舐めとれなかったけど、今じゃあ簡単ですねぃ」
「そんな話してる場合じゃなくね!?」
「今じゃ俺のが旦那より少し高い」
「・・・・・・かわいくねぇ・・・」
「旦那は可愛いですね」
「なっ、オッサンに可愛いとかねぇよ!」


沖田は再び銀時に顔を近づけ


「今じゃキスだって簡単にできる」


口づけた。

銀時は一瞬何が起こったか分からないような顔をしていたが、はっと気づき大声で叫んだ。


「何してんだァァァァァァ!!!」




びっくりして落としてしまったソフトクリームのことはすっかり忘れ、往来でされたことにいたたまれなくなって急いで万事屋へと帰った。




家に帰って、「アレ?早いお帰りですね」と、掃除中の新八(掃除するからって追い出されたんだった)が言う。 そんな新八も背が高くなった。目の高さくらいまでしかなかったはずの新八も今では銀時を変わらないくらいだろうか。 数年前ではつむじが見えるようなくらいだったのに、目線が同じになってきた。

どいつもこいつも、成長しておっきくなりやがって。
かわいくねぇ・・・

銀時はいまだ残る、唇の感触を思い出しては赤面していた。


背が高くなって、もともと年の割には大人びた顔をしていた彼が、あれはただ、周りに年上ばかりいるからと、 無理して大人にならなきゃいけなかった世界で大人びていたんだろうとわかるように、今20を超えて前とは違う雰囲気を醸し出している。
大人になった。数年前は年相応に子供らしい所もあったのだが(今も子供らしいところもあるが)、今は大人の色気が出てきたというか。
大人初心者で、まだまだだが、数年前の彼を知っているからこそ、銀時にはそのギャップというか、そんな成長についていけない。


かわいいかわいいと思ってた、銀時にしてみては子供、ガキだったのだ。憎たらしいところも含めて、可愛いと思っていたのだ。それがどうだ。 今じゃ可愛い、というよりもむしろかっこいいという表現があっているような。しかも逆に可愛いなんて言われてしまって、銀時はドキドキしていた。
これはもう、年上の女が、前よりももっとかっこよくなって現れた年下男に不覚にもときめいてしまったような。 どこのトレンディードラマだ。例えようにもそのままだし。って銀時は男なのだが。
そう、今の銀時の心は、女のように、沖田にときめいてしまっている。不覚にも。


あんなことされて、次どう顔を合わせればいいんだろう。
背を追い越されて、視線の交点が近くなったあの子に、至近距離で見つめられては、銀時は平静を保つことができないかもしれない。







「沖田隊長、なんかご機嫌ですね」
「まァな」


今日は日当たりもいいし暖かいし縁側で昼寝もいいが、風も強いし鼻もむずむずするし、昼寝は諦めよう。
土方に怒鳴られては、今日のこのいい気分が台無しになってしまうのである。


「明日桜餅でも買って行こうかねィ」


沖田は空に浮かぶ、春風に吹かれてすぐに流されていく白い雲を見上げて、同じ白の彼を思った。



沖田と新八は将来有望
10.04.01ブログ 10.06.02UP