天然で小悪魔って罪になりませんか?

「トシィィィ〜どうしてまた断ったんだよぉ。お・み・あ・い!すんげぇ美人な娘だったろぉ〜? こんな美人な娘と見合いできるってだけで羨ましいこと山の如しなのによぉ〜!」
「・・・今のところ興味はねぇ」
「あ、まさかトシ、イイ奴でもできたのか!?そうなのか!?」
「違ェって!」
「即座に否定するってことは本当にいるんじゃないスかぁ?副長」
「うるせぇな!いねぇよんなもん!」


先日、松平のとっつぁんが寄こした見合いを断った。 まあもう結婚してもおかしくない年だし、それに副長という立場だし、局長である近藤さんには誰も期待していないから俺に白羽の矢が立つのはわかってんだ。
立て続けに来る見合いを断るたびに、こうやって近藤さんや原田に絡まれる。


「いないならなんで断るんだよぉ、トシィ・・・。とっつぁんにまた怒られたんだぜ〜〜? 理由もなく断るんだもんよーとっつぁんに伝える俺の身にもなってくれよぉ」
「・・・悪ィ・・・近藤さん」
「土方さんには心酔してる人がいるんですよねぃ?」
「なっ、てめ、総悟ッ」
「えええ!?そうなんですか!!?」
「そうなのか!?トシ!!」


近藤さんの隣で飲んでいた総悟(お前まだ未成年だろうが!)が無駄なことを口走りやがった。
近藤さんや原田も驚き、そのまた近くで飲んでいた山崎までもが驚く。


「え、誰誰?俺達の知ってる人か?あ、もしかしてお妙さんとか言わないよね!?」
「誰があんなゴリラ女っ」
「で、誰なんですか?」
「土方さんの好きな人はぁ〜」
「総悟ォォォォォォォ!!」


かろうじて、総悟が口走るのを阻止した俺は、次の日の昼、口止め料としてジャンプを買いに行かされた。
ついでに煙草も買う為に、コンビニへと入り雑誌コーナーでラスト一冊となっていたジャンプを手に取ると、同じジャンプを白い手が掴んでいた。


「は?」
「あれ?土方くんじゃん」
「万事屋・・・」
「ところで、コレ、譲ってくんない?」
「あ?」
「ジャンプ。俺さぁ、さっきスーパー行って来たんだけどもう無くって、ここで2軒目なの。だから譲ってくんない?」
「2軒も回ったんなら3軒目だって同じだろ。本屋行け」
「お前車なんだろ?どうせ。だったらいいじゃねぇかよ。つーかお前マガジン派じゃなかったっけ?」
「総悟に頼まれたんだよ」
「へぇ〜、パシってんの?ださー」
「うるせぇ!つーか寄こせ。女が少年誌買わなくてもいいだろ」
「うわ、それ差別ー。じゃんぷは女の子にも楽しめる素晴らしい雑誌なんですぅ」
「お前もう女の子って年じゃないだろ」
「心は少年ですから。ということで寄こせ」
「なんでだよ」
「いいだろ?もう歩き疲れたの。途中でスクーターエンストしたからよぉ・・・な?なんなら言うこと聞いてやってもいいぜ?」
「災難だったな・・・、て、今言ったの本当か?」
「おう。武士に二言はねぇ」
「そうか・・・じゃあソレ譲ってやらァ。ついでに奢ってやるよ」
「え、マジ!?」
「だから、今日の夕飯付き合え」
「は?そんなんでいいの?」


俺が狙ってるのはこの女だ。
初めて会った時は胡散くさい奴だと思い、次会った時は仇を取ることしか考えてなかった。 それから何度か会っていくうちに、初めの二回は違うことに気を取られていたせいで気付かなかったがコイツが女だということを知った。しかも結構イイ身体している。
ぽてっとした唇に眠たそうな目。それが妙に色気を醸し出している。
思えば二度目に会った時から、コイツの魂には惹かれていた。それから何度か話すうちに、毎回毎回口喧嘩にはなるが、この二人でいる空気が俺は好きだった。
ただ、俺がこうやって会ったらいつも喧嘩腰になってしまうように素直じゃない(自覚はあるんだ)ので、 いつまでも進展どころか俺の気持ちに気づいているかどうかさえわからない。
でも今回はいいチャンスだ。コイツには甘い物を食わせればイイ人と認識されるのだから、食事に誘って、 しかもホテルとかの高級店で奢ってやればさらに評価はあがるかもしれない。
まあぶっちゃけ下心はあるんだが。その食事の後に取っておいた部屋で美味しく頂く。こんな計算をしているのだ。






―――夜。
待ち合わせ場所に遅れてきた銀時。まあこの辺りも計算済みだ。
予約しておいた料理がどんどんと運ばれてくる。


「え、まさかこれってふぉあぐらってヤツ?」
「そうだ」
「ふおぉぉぉ!すげえ、口ん中でとけた!」
「そうか・・・美味いか?」
「うん!めっちゃ!つーかお前こんなイイもん毎日食ってんの?いいですねぇ高給取りはぁ」
「毎日じゃねぇよ」
「ふぅん」


メインディッシュも食べ終わり、デザートが出てくる。銀時の顔はさらに明るくなる。


「んー!最高!ココのデザート食べてみたかったんだよな〜。前テレビで特集やっててさ」
「そうなのか。じゃあ俺の分も食うか?」
「え、いいの!?」
「ああ。甘い物は好きじゃねぇ」
「ふぅん。勿体ねぇなぁ。こんなに美味しいのに」


俺の分のデザートの皿を差し出すと、目をきらきらさせながら食べ始める。くそ、可愛いじゃねぇか。
というかいつも思うが、どこにそんな甘いものが入る場所があるんだ。 そして甘いものばっかり食っててよく太らねぇよな・・・。そうか、その脂肪は全てその胸に・・・いやいやいやいかんいかんいかん。


「ん?どした?土方なんか瞳孔開いてるよ?更に」
「いや、別になんでもねぇ・・・」
「そうか?」


ふぅ〜、と一息ついて銀時がフォークを置く。食べ終わったようだ。
よし・・・。ここで、あまりがっついているような素振りを見せずに誘・・・・・・


「土方、今日は美味かった!ありがとな」
「お、おう。・・・また奢ってやる」
「マジ!?やった!あ、でもさぁ、今度はこういう堅苦しいところはやめねぇ?やっぱり俺、苦手なんだよなー。 もっと酒飲めるところとか・・・あ、俺安くて酒の美味いところ知ってるから今度そこ行こうぜ。な?」
「あ、ああ」
「よし。じゃあお前が暇な時誘ってくれよ。あんまり認めたくはねぇけどお前とは話合うし、まあその、楽しかったから」
「な・・・っ」


楽しかった楽しかった楽しかった楽しかった楽しかった楽しかった楽しかった―――――


「んじゃ、実は今夜家に神楽と新八待たせちまってるから帰るな。じゃあな〜」
「は!?」


俺の頭の中で、銀時が言ってくれた何とも嬉しい言葉がぐるぐるとエコーがかかっているうちに、銀時は立ち上がって店を出て行ってしまった。
俺の、来ている服の胸ポケットに入れておいた部屋のキーはどうしてくれる・・・。
・・・・・・そうだ、アイツは鈍感だ。俺がはっきりアピールしていないってこともあるかもしれないが、総悟にはバレているし、 たぶん銀時のところのガキ共にも気づかれているはずだ。他人が見て気づかれるくらいにはアピールはしているのに、本人には気づかれていないのだ。


10.08.01UP