「兄ちゃん、いくらだい?」
口の中でアイスが溶ける。
あんなに照りつけてきた太陽も今はナリを潜め、代わりに頭上で月が顔に影を落とす。
夜も始まってから数時間経ったというのにそれでも外の気温は若干下がりはしたものの暑い。
その気温で銀髪の男が持っているアイスクリームは外気にあたっているところから徐々に溶け始めてきている。
どろりと垂れそうになったアイスクリームを赤い舌が舐める。
時折白い肌に映える赤い唇をすぼめ啜る。
月の下で揺れる銀髪は月の所為もあるが夜の暗闇に反発するように溶けきらず、さらに月の光を浴びてきらきら輝いている。
その銀髪の前髪から覗く瞳は紅く、淫靡な輝きを備えながら声をかけた男を見つめる。
一心不乱にアイスを舐め、啜る様は、男を自身を咥えられているような錯覚に陥らせた。
ただアイスを食べ続け、ただ見つめてくるだけで一向に返答しない銀髪に、男は焦れるが引き込まれるように、同じように銀髪を見つめ返し立ち尽くしていた。
だんだんと、銀髪のその淫靡な様に興奮してきて、男には銀髪が誘っているようにしか思えず、焦れた男は銀髪を押し倒してしまおうと、一歩足を踏み出す。
やがて食べ終わったアイスの、棒についた液を惜しむように一舐めし、少し首をかしげ言う。
「終わっちゃった」
その一言は、男の最後の理性を切るのに十分で、男は銀髪の身体をを、月の光が差し込む路地の壁に押しつける。
「兄ちゃん、なぁ、いいだろっ?」
「んー、アイス、なくなっちまったからなぁ」
「アイスなら、後でいくらでも買ってやるから・・・っ」
「じゃあ、そこのいちごパフェ、奢ってよ」
「ああ!わかったから!」
指を指した場所は妖しい光が輝く建物で、男は切羽詰まったように、銀髪は男に腕を引かれ愉しそうにその中へと消えて行った。
10.06.12UP